アンカリング(anchoring)

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BSの番組を見ていると、家族から「これ、BS?」と聞かれたりする。「うん」と答える。間違いだったことがない。簡単に見破られるのは、番組のコンテンツが地上波と比べてまったりとしているだけでなく、途中に挟まれるコマーシャル(CM)の雰囲気が違うからだ。

クオリティがどうこう、言いたいわけではない。それは言わずもがなだし、あえてディスる必要もない。興味深いのはCMの一本一本が地上波と比べて比較的長く、まるで小さな番組を視聴しているようなものまである。特に多いのはいわゆるテレビショッピング、表示されている番号に電話をかければ商品を購入できるタイプのものだ。

特に私が視聴しているような番組のスポンサーをやっているような会社の商品は、若い人をターゲットとするようなものは皆無で、大抵の場合は「健康」だったり、「日用品」だったりする。構成もパターンが決まっていて、およそ信じられないような若返りを訴えたり、商品の魅力に高齢者代表のようなタレントが心打たれたりするという感じだ。

CMの最後には肝心の価格が表示されるのだが、それも大体のところ同じようなもので最初に一旦、価格を提示しておいて、そこから値引きした違う価格を提示、という面倒なことをする。どうしてそのような面倒なことをするかといえば、それはマーケティング戦略に沿ったものだからだ。

私たちの心理は「最初に与えられたもの」に自分が自覚しているよりもはるかに強烈な“認知”をしてしまうらしく、それを「アンカリング」という。アンカリングとはアンカー、つまり船の錨(いかり)をおろすという意味で、巨大な貨物船すらも停留させるほどのインパクトがある、というモノの例えだ。

最初の提示額が「なんと、19,800円!」などと言っておいて、それが「今から1時間だけ、14,800円です。今すぐお電話を!」、とこうくるのである。CMをみている私たちは最初の提示価格に、自分の自覚よりもはるかに強烈に認知してしまい、そうなると「今、買うと5,000円儲かる」という、なんだか不思議な心理が働くといったわけだ。

また、この戦略の中には希少性効果や端数効果という、マーケティング戦略も隠されている。無防備なシロウトではとても太刀打ちが出来ない。やはりBSの番組は録画しておいて、CMのところは飛ばしながら視聴するのが良さそうだ。

以上

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