昨年、大リーグでホームラン王となった大谷選手であるが、今年はキャラ変とでも言おうか、高打率をキープしている。野球に詳しくない人にしてみれば絶対数がもっとも多いホームラン王と比べて「打率」という概念はちょっとわかりにくいのだが、この指標のトップ選手は「首位打者」と呼称されるところからみて、「打者のチャンピオン」はむしろこちらと言えるのかもしれない。イチロー選手は現役時代、よく年間の「首位打者」に輝いていた。
「打率」というのは簡単にいえば対象となる打席数の中でヒットを打った割合のことだ。「対象となる打席」というのがちょっとややこしく、シンプルな「打席」からファーボールやランナーを進めるために自身が“犠牲”となってアウトとなる送りバントなどは「対象とならない打席」だ。
問題は、、、いや問題でもなんでもないのかもしれないが英語言語でバッティングアベレわ李愛ージ(Batting Average)の訳語として与えられた「打率」という表現についてだ。疫学分野では「率(rate)」としてよいものは時間の概念がある場合に限定されており、その視点でいえば「打率」はむしろ「打割合(だ・わりあい)」とでも訳さないといけないという話になる。
同じようにして例えば選挙等の「得票率」だとか、「離婚率」なども疫学分野で許されているところの「率」という概念ではなく、あくまでも「割合」の指標ということになる。
個人的にはもう市民権を得た言葉なのだから、打率は打率、得票率は得票率でよいではないかというのが本音ではある。しかしながら疫学分野に身を置いている私にしてみると、その場の雰囲気―有り体にいえば疫学の先生が含まれている“割合”―を踏まえて「率」という表現を差し控えたりしないと思わぬ“地雷”を踏むことになるので注意している。
本ブログを読んでくださっている人もこの話は知っておいて損がないだろう。いたずらに「副作用発現率については、」だとか「罹患率は」「有病率は」など迂闊に発言すると気分を害する疫学の先生が少なからずいらっしゃるからだ。
さて、冒頭の「打率」であるが、この指標のトップ選手がもっともエライ打者だと考える人はだいぶ減ったように思える。大リーグの公式サイトでも打者成績のランキング表示は随分と前から「OPS」なる指標だ。この指標の説明は本ブログでは省略するが、私個人としても打率やホームラン数での打者成績の順位よりもOPSの順序で打者成績を表示するのは納得性もあり大賛成だ。
因みに大谷選手の場合は「打率」「ホームラン数」だけでなく「OPS」も大リーグのトップを争っている。さて、打者成績を示す指標として今やもっとも尊重される「OPS」のトップ選手に与えられるタイトルはアメリカでも日本でも今のところ制定されてはいないし、そのような話が全く聞こえてこないのは興味深いところである。
以上
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