梅雨どきである。会社からは週に2日ほど出社することが推奨されてはいるのだが、在宅勤務で済むならば在宅勤務で済ませたいというのが本音である。雨の降る日に出社する気がなかなかおきない。
とはいえ、大学院にも通っていてこちらは基本的にリアル授業である。土曜日の朝9時から90分×4コマ、という日は少し雨模様ではあったが、キャンパスまで出かけるより仕方がない。雨に濡れる距離は、家から最寄り駅の数百メートルと、通学先の駅からキャンパスまでの数百メートルだ。
教室では同級生と梅雨時の話をしたのだが、これは各人各様の事情があり、とても大変な人とそうでない人とのギャップがある。簡単にいえば最寄り駅までの距離が長い人は大変で、最寄り駅まで近い人は楽、というわけだ。また、駅まで遠いといってもアーケードを通ってくるので全く濡れない、なんていう事情の人もいる。うらやましい。
一方で「土曜日の朝9時」にハードルがある人もいる。キャンパスは信濃町にあり、遠方の県から2時間かけてくる人は朝が結構、辛くて、これはどうも駅からの距離よりも幸福感に影響するかもしれない。
重要なのは「駅までの距離」か、「通勤・通学時間」か。そんな話をしていてふと、地位財という経済学分野ながら幸せの心理学に近い概念のことを思い出した。提唱したのは経済学者ロバート・フランクである。
周囲との比較で幸福を得るものを「地位財(positional goods)」、周囲との相対比較とは関係なく幸福を得るものを「非地位財(non-positional goods)」と整理している「駅までの距離」が短い、つまり最寄り駅に近いところに住んでいるというのは、人と比較することのない、非地位財の代表選手である。
私たちは社会的な生き物である。高級車、宝飾品、高級ブランドの服飾などは周囲の目を気にする地位財として整理される。購入品だけでなく、会社での地位であったり、子供の学歴なども地位財。要するに有利であればヒトに自慢したくなるようなものは全て地位財というわけである。
その点、自宅から最寄り駅までの距離というのはそのようなものではなく、純粋に駅近は「自分がうれしい」のであって、他者と比較してうれしいのではない。
ロバート・フランクによると、幸福への貢献という視点でいえばなるべく非地位財を増やす方がよいという話だ。地位財はヒトの目を気にするもので幸福感は限定的、あまり長続きしない幸せだ。その点、非地位財で感じる幸福は長続きする。
その点、私は以前、駅から11分のところに住んでいたが、今は徒歩3分。また別路線の駅までも5分でいける。引っ越して随分と便利になった。確かにこれはヒトに自慢したいという話とは違う。こういうのを増やしていくと幸せに近づけるのかな。
以上
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