ホーソン実験( Hawthorne experiments )

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HRM(ヒューマンリソース<人的資本>マネジメント)の金字塔ともいわれる、アメリカ民間企業による社会実験のことをご存知だろうか。1924年から1932年の8年間、ホーソン工場で行われたことから俗に「ホーソン実験」と呼ばれる。

この実験が行われる前は労働者は単に「労働する人」であって、その労働に対して対価を支払う、経営者にとっては言わばコストであったのだが、この実験以降は労働者は「コスト」というよりもライバル企業との競争優位の源泉として、「資本金」と同様、「人的資本」と考えられるようになったという。

実験の主たる目的は、現代人である私たちにとっては少し滑稽かもしれないが「照明を明るくすると生産性があがる」仮説の検証にあった。結論から言えば「照明を明るくしても生産性はあがらない」。残念。実験は失敗である。

その他、どのタイミングで休憩をとらせるのか、就業時間はどうするのか、室温はどうかといった様々なパラメータが調べられたのだが、生産性を向上させるものは実験を計画した人たちの想定外のところにあった。それは「他人の目」である。

そもそもホーソン実験の被験者として選抜された社員らは「私は選ばれし者」という認識をすることで、実験以前よりも平均パフォーマンスがあがったという。加えてその「選ばれし者たち」に囲まれて行う作業は、同僚からの評価と、自己実現、「選ばれし者としての期待貢献」があいまって、証明が暗くなろうが何をしようが、実験前よりもパフォーマンスが高かったということである。

私も人間だし、読者諸氏も人間なので、「わかる、その気持ち」といったところだろうか。この効果のことはホーソン効果といって、未だに会社運営にも生かされている。

またこうした研究は「人的資本の研究」ではあるものの、口の悪い人に言わせれば人件費というコストを「いかに効率的に生かすか」という視点でみることもできるわけで、我々労働者は経営層からみたら資本でもあり、やはりコスト(負担)でもあるというわけだ。

人のやる気に火をつけるのがいかに大変か、というのはお子さんをもつ親であれば誰でも知っていることだろう。子供に勉強させようと、色んな手を尽くしても大抵はうまくいかないものである。会社の経営者や管理職もまた子を持つ親と同じ悩みを現代でも共有している。

以上

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