BL0106 端数効果( fractional effect )

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「あざとい」という言葉は、主には女性がよりかわいく見える、感じられるように自ら演出するということに使われているようだ。その昔は「ぶりっこ」などという表現もあったので、いま使われている「あざとい」はほぼその昔の「ぶりっこ」と同義な気がする。

ただ、「あざとい」の意味を辞書的にいうならばもっと広く、小利口というかずうずうしいというか、あくどいというか、戦略的な意味だったハズである。もちろん、だから何だということではなく、見え透いた戦略は女性の「ぶりっこ」に限らず相手や周囲にも見透かされてしまい、嘲笑の的となるのがオチだ。

とはいうものの「あざとい」戦略が何故に無くならないかといえば、それは戦略として成功しているからに他ならない。例えばスーパーに行ってみると、298円やら1980円やら、何やら「あざとい」戦略によって決められた小売価格のフダが並んでいる。

平成や令和時代の人にしてみたらアタリマエのこの光景も、その昔の昭和時代にはほとんど使われていない戦略だったように思う。300円が適正価格のものをあえて298円とする必要はない。

こうした端数を用いた価格がアタリマエになった背景には社会心理学研究による“エビデンス”がある。「端数効果」「端数価格効果」などと言って、簡単にいえばたかだか2円しか安くないのに、それが20円、あるいは30円ほどもやすく認知してしまうというのが人間の脳のクセである。

野球好きな人がならわかると思うが、打率が3割こえていると「3割打者」という呼称と名誉が与えられるが、2割9分8厘だとこの名誉は与えられない。かの大打者、落合博満さんも全盛期に打率3割を越えられなかったシーズンがあって、「これほどまでに残念なのか」と思ったというほど、3割というのは重要なハードルである。

一方の小売価格においては2円の差など大したことはない。私たちは一番大きなケタに意識が強く働いてしまい、298円の商品を「300円しない」→「200円代で買える」→「270円とそんなに違わない」といった勘違いをする。

それにしてもなんとばかばかしく「あざとい」戦略なのだろう。にもかかわらずもう何十年もその戦略は利用されていて、つまりは“成功”し続けている、という訳だ。

ただ、不動産業界にあってこうした端数の使い方はちょっと違うらしい。以前、住んでいたマンションを手放す際にその販売を仲介する会社さんから言われたのが、「たとえば3900万円で売りたい場合には、3980万円で売りにだすとよい」のだそうで、「買おうかどうか迷っている人との折衝にて、端数の80万円を値引きすると相手もグッと買う気になる」とアドバイスされた。

あざとく、見え透いた戦略であっても案外と有効なことがある。不動産価格のこの話、表に出したらマズイのかな。

以上

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