BL0109 フットインザドア( foot in the door )

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東京中日スポーツがこの1月(2025年1月31日)付けで休刊したことにショックを受けている。中日ドラゴンズの一ファンである私は、ドラゴンズの強かった頃にはしばしば駅やコンビニでトウチュー(東京中日スポーツ)を買って読んでいたものである。

確かにこの3年間は毎年最下位ということもあってほとんど購入することも無かったのだが、ドラゴンズ選手の活躍を大きな見出しで取り上げるトウチューが無くなるというのは大変残念な出来事である。

電子化社会となって久しい現代では、世界的にも紙面での新聞売り上げは軒並み減少しているとも聞く。かといって必ずしも電子版で新聞を読んでいるかというとそうでもないらしく、活字離れは社会問題化しつつあるとも言われている。街に本屋が無くなっていくことも残念だし心配なことではある。

かといって昔はよかった、とノスタルジーに浸るというのもちょっと違うのかもしれない。以前は苛烈な新聞販売競争があり、学生の頃はアルバイトに出かける時間だというのに新聞販売員が玄関で居座り、脅しまがいの売り方をされたうえそれに付き合わされて結局アルバイトに遅刻してしまったということもあった。

彼らの売り方は大抵、「3か月でいいから、お願いします」であった。新聞購読を1年契約するには気が引けるけれど、ティッシュペーパーなどをおまけしてくれて、たったの3か月ということであれば、仕方がない、契約するかと思う人も多かったことだろう。

「ちょっとだけでも話を聞いてください」といったように、最初はささいな要求だけをして、そこから「1個だけ、試しに買ってください」「3個買って頂けたら値引きしますよ」といった調子で徐々に条件を上げていくという折衝戦略はフットインザドアと呼称する。

まずはフット、つまり玄関口で片足だけ入れさせてもらうという意味だ。最初に大きな要求をしてそこから徐々に要求を下げるという戦略はドアインザフェイスと呼称されるのだが、言わばその真逆の戦略ともいえるだろう。

このような戦略は何もアコギな新聞配達員だけのものではなく、私たちもよくやっていると言えなくもない。例えば気になる異性との付き合いをする過程では、最初はランチを一緒にするといったところから始めるのが王道だろう。話をしたこともないのにイキナリ「付き合ってください」だの「結婚してください」だと言う人はいない。

かくして当時の新聞販売員はフットインザドア戦略によって新聞の販売を拡大させていたという訳である。とはいえ苦学生であった私は月間3000円ほどもする新聞を購読するなど考えたこともなく、残念ながら響くことはなかった。

トウチューを買うにしても、それは年に数回、ドラゴンズが大勝利を収めた翌日だったりで、とても毎日の購読は考えたこともない。ただ、その年に数回だけの、トウチューの購入は私にとって大切な宝物でもあった。

以上

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