スイカを無くしてしまった。「スイカ」といっても食べ物ではない、交通系ICのことだ。確か15000円ほど入っていたハズだ。ツイてない。
JR大井町の改札に行ってスイカの再発行をお願いしたのだが、発行書はもらえたものの翌日にならないと発行できないらしい。翌日は京都に行く予定があって、JRの所轄が違うのでどうにか品川を出発する前に再発行を済ませなければなるまい。ツイてない。
その翌日、JR大井町と同じ要領でJR品川駅の改札にて再発行の手続きをしようとしたのだが、私の前に数人、先客がいる。しかもその先頭の先客がどうやら駅員さんに何やらクレームを言っている。いつ終わることやら。ツイてない。
少し聞こえてきたところでは、どうやら一旦、改札を出てそれから手続きをしなければならないということに腹を立てているようで、「2025年にもなってまだそんなことをしているのか!」とご立腹の様子である。当該の駅員さんに言っても仕方ないだろうに。
「怒り」というのは厄介で、自分が怒りたくて怒っている訳ではないので、それがいつ収まるか当人すらもわからないのが常だ。こんな場面に出くわしたとしても私が間に入って、「この駅員さんに言っても仕方ないでしょう」などと諭したらおそらくはもっと悪い状態、つまり私まで巻き添えになったうえクレームの時間は延びるに違いないのである。
一方で「怒り」を上手に利用するということもあろう。「あいつを見返してやろう」などと思って一生懸命頑張るという動機にするのは珍しいことではない。
また、折衝を有利に働かせるためにわざと怒る、あるいは怒ったフリをするというのもある。マッドマンセオリーとはこのような手法であり、より正しくいえば「あいつは何をしでかすかわからない」と思わせるという戦法、戦略である。
古くはマキャベリの「君主論」に由来するとも聞くが、有名なのはアメリカ大統領であったニクソンがとった対ベトナム戦略や対ソビエト戦略である。ニクソンは相手国に狂人かのように思わせることで折衝を有利にすすめたという。
ここ日本にあっても織田信長の「うつけ者(愚か者)」という噂の流布は、ひょっとしたらマッドマンセオリーだったのかもしれない。
何よりこの戦略のキモは見事に狂人を演じることであり、「本当はマトモなのに狂人のフリをしている」と周囲にバレてしまっては作戦失敗である。
その点において、ドナルド・トランプの戦略はうまくいっているようにも思える。見事に狂人を“演じている”。とはいえ折衝相手のプーチンもまた見事なマッドマンセオリーのアクターであり、折衝がうまくいくかどうかはわからない。
さて、結局のところ当日はスイカを発行してもらう時間がなく、再発行は後日となってしまった。残額の15000円は残っているのだろうか。
以上
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