BLO121 要因分析( factor analysis )

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昨年の国内出生数が70万人を割り込んだというが、これは国の推計よりも14年も早いという。2023年の推計では2070年の日本の人口は、前回推計の8300万人よりも少し改善して8700万人とされたが、今回の出生数情報が加わると、この推計値はかなり下がるかもしれない。

人口減少の問題が取り上げられるようになったのは何も最近のことではない。10年ほど前に会社で受けたマネージャー研修でも、「人口減少を食い止めるにはどうしたらいいのか」というお題が取り上げられた記憶があるし、人口減少問題そのものはもう数十年前から課題として認識されていたハズである。そうであるのに、この残念な状態というのは、この数十年、無策であったか、実施した政策が有効でなかったかということになろう。

そうはいっても「人口減少を食い止めるにはどうしたらいいのか」という課題は、簡単な課題ではない。政府は教育費の無償化やお祝い金の配布などを検討しているようだが、果たしてこうした策が有効打になるかどうかは懐疑的な見方も多い。

さて、前述のマネージャー研修は確かロジカルシンキング研修であったかと記憶している。その中にあって印象的なのは原因究明のために「Why?」を5回、繰り返しなさい、という指導であった。人口減少を食い止める政策を考えるうえで、そもそも「人口減少は何故起きているのか」を問う。

すると、「生活費が足りないから子供を育てられない」とか、「男女の出会いが少ない」といった原因らしいものがいくつか出てくるだろう。さらに「生活費が足りない」について、それは何故か、「Why?」とまた問う。そうすると、「給料が上がらない」「円安と国際競争力の低下」などが上がってくる。そこでまた何故にそれが起きるのか、「Why?」と問う、といったことで深層に潜む本質的な課題に辿り着くといった方法論である。

こうしたやり方はいくつかの提案があるが、思えば私も生業としているのはこのような要因分析の仕事である。医薬品の処方で効かない人はどんな人なのか、副作用が起きやすい人、あるいは重篤化しやすい要因は何か、そんなことばかりこれまで分析してお給料をもらっている。

ところで、問題の本質を追求するうえで、「既存の概念にとらわれない」ことも大切である。人口減少という課題と少子化という課題はあたかも同一視しがちであるが、そこをまず疑うことで別の対策も出てくるだろう。

例えば、「日本人への帰化をゆるくする」はどうか。外国人を日本人に帰化することで日本の人口減少問題の対策にはなるだろう。もちろん、それによって発生する課題がまた色々と生じることは想像に難くないが、論理的思考というスキル獲得のためにはお題が何であるかを正しく見定める練習が必要となるのである。

当時の私の対策案は帰化制度の緩和の他に、「領土を広げる」だったか、「他国を併合する」なども列挙した記憶がある。こうしたアイデアは「人口減少=少子化問題」と、勝手な思い込みをしている人には難しい。

アメリカ大統領はカナダの併合だとか、グリーンランドの買収だとか、ちょっと想像もできない話を持ち出しており他国からひんしゅくをかっている。当時の私の対策案はロジカルシンキングの何たるかという研修においては相応しい回答だったかもしれないが、2025年の今は思わぬリアリティが生じており、思いつきやすくなった一方で、かえって冗談でも言い出しにくくなってしまった気がする。

以上

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