劇場版『鬼滅の刃』の最新作が公開され、連日盛況となっている。物語は鬼に家族を殺され、唯一残った妹を鬼にされた主人公の竈門炭治郎が、妹を人間に戻し、家族を殺した鬼を打つため、鬼狩りの道を進んでいくというあらすじである。前作「無限列車編」は日本歴代興行収入第1位を記録し、歴史的な作品の一つとなった。
劇場のような、多くの人間が一度に利用できる財やサービスを「クラブ財」という。クラブ財は「非競合性」と「排除性」を持つ財であり、自分が利用していても他の人が問題なく利用でき、なおかつ料金を支払った人しか利用することができない。
クラブ財という名前の由来は、会員制クラブといわれている。料金を支払った人が入会し特典を得られるサービスで、人数には基本的に制限がない。YouTubeでいうメンバーのようなものだろう。
映画館の場合、自分が利用していても他の人が利用できるが、席に限りがある。昔は席の予約はせず、立ち見も可能だったらしいが、博物館や美術館と同様に物理的な制約というものがある。もちろん、人が多すぎると見づらい、つまりサービスの低下ということにもなる。
一方で、動画配信サービスなどは、何人が利用していても、問題なくサービスを利用できる。供給側にとっては、在庫切れや混雑などを心配する必要がなく、利用者は多ければ多いほどいい。
クラブ財は一つ一つにコストがかからないため、値段設定の幅が広い。極端にいえば1円でも利益が出せる可能性があるため、どれほどの需要があるかを把握することがより重要8になってくるかもしれない。
今注目すべきクラブ財といえば「情報」であろう。無論、情報の大切さは古くから変わっておらず、戦国時代に活躍した「忍者」などの存在も広く知られている。なお、隠し事や不祥事などを暴く「すっぱ抜く」という言葉は忍者の呼称のひとつである「透破(すっぱ)」が語源らしい。
公的機関などが提供する無料の情報もあるが、クラブ財としては有料のメールマガジンのような情報が考えられる。ビジネスに関するオンラインサロンなども存在し、有益な情報交換の場として知られている。
情報を多くの人で共有する、あるいはビジネスとして利用するのは社会にとって望ましい面もあるが、個人情報などを勝手に売買されたりしたらたまったものではないだろう。
一方で、医療などの分野で個人の情報利用が医療発展の促進につながるという面もあり、個人の権利とのバランスが問題となっている。
『鬼滅の刃』最新作公開に伴い、他の作品の枠が減ってしまうという懸念もある。映画館にも利用できる席に限りがあるのは当然だが、ここまでの競合性はなかなか想定されていなかったのではないだろうか。誰もが問題なく利用できれば良いのだが、はたして。
(オウセイ)
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