大学生になったタイミングで親元を離れるという人は多いだろう。かくいう私自身、大学に入学するタイミングで新潟を離れ一人暮らしを始めた一人である。
親と一緒に暮らすということと、自分ひとりで暮らすということの違いについては、親元を離れたことがない人にとってはクリアにその違いを認識することは難しいだろう。私の場合は千葉県の学生寮で一人暮らしを始めたのだが、炊事洗濯すべてを自分でやらなければならなかったし、思いがけず早々と仕送りが途絶えた以降は部屋代も食事代も自分で全てまかなわなければならず、はた目からしたらそれなりの苦学生であったに違いない。
そうはいっても、正直なところ毎日がハッピーで仕方がなかったのである。自分のペースで暮らす。好きな食べ物を食べ、好きなことをする毎日。生活費を捻出するために月間で20万円、30万円もアルバイトをしていたが、それもまた不幸だとは思わなかったし、特に学生寮だったこともあってか、少なくとも「ひとりぼっち」であるとか、ホームシックであるとかは無縁であった。
「孤独」が社会問題として認識されて久しいが、他方、ヒトには「孤独でいたい」という要求もある。今では妻と子供と一緒に暮らしているが、それでもやはり休息のために重要な行動として「一人でいる」時間は大切である。
世界134か国、約18,000人を対象にイギリスの放送協会が2016年に実施した「The Anatomy of Rest」*(休息の解剖学)では「休息を感じる活動」として選ばれたトップ10件を紹介しよう。
- 読書
- 睡眠
- 自然環境を眺めるorその中で過ごす
- 一人で過ごす
- 音楽を聴く
- 特に何もしない
- 散歩
- 入浴・シャワー
- 空想にふける
- テレビを見る
一人でいる時間が大切だ、とした人は全体として68%であったという。「孤独」そのものは社会問題化している一方で、「一人でいたい・一人になりたい」という孤独欲は私たちの人生にとって大切なピースの一つといえるのかもしれない。「離婚」は一般的にはネガティブ用語だが、それによってアンハッピーがハッピーに変わるという人は多いだろうし、そうでなければもはや4割とも言われる離婚率は説明が困難である。
むろん、バランスが必要であることは言うまでもないだろう。この研究では休息時間が長いほど幸福度が高い傾向が見られた一方で、その休息の質が重要でいたずらに時間が長ければいいとはしていない。孤独を感じる時間が長いことが健康によくないという研究はたくさんあるのだし、「再婚」は婚姻全体の4分の1である。
私自身、ふりかえってみても一人暮らしをしていた10年間も合わせ、「孤独だな」と感じていたことはほとんどなかったように思う。今は妻と子と3人暮らしだが、一人でいる時間と、他の人と一緒にいる時間の、うまいバランスが恐らくはキモなのだと思う。
https://link.springer.com/content/pdf/10.1007/978-3-319-45264-7_8.pdf以上


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