「日経トレンディ2025年12月号」に「2026年ヒット予測100」や「2025年ヒット商品ベスト30」といった特集が掲載されていたのだが、自分は未来を予測できるような人間ではないな、と痛感してしまった。ちなみに、2026年のヒット予測1位は「苦労キャンセル界隈」、2025年ヒット商品1位は「大阪・関西万博」だったのだが、前者は初めて聞いた概念であったし、大阪・関西万博についても前評判からここまで人気になるとはとても想定できなかった。ところが、そんな私にも容易に予測できることが1つある。それは現在持っている1000円の価値は明日には1000円未満になってしまうということだ。
夕方になるとスーパーのパック寿司などは値下がりすることが多く、夕飯の節約にはありがたいことである。生鮮食品のように、時間によって劣化しないということが貨幣というものの強み、あるいは特徴なのだが、同じ1000円でも未来においては価値が下がってしまうらしい。なぜだろうか?
今日もらえる1000円と明日もらえる1000円はどちらが欲しいだろうか?前者だという答えがほとんどではないだろうか。これはすなわち今日の1000円は明日の1000円より価値が高いということを意味する。逆に、明日の1000円の価値は今日の1000円の価値より低い、すなわち価値が下がるということであり、全く同じものでも時間によって価値が下がってしまうことを「時間割引」という。
今日の1000円の価値が高い理由の1つは今の幸福の価値が未来の幸福よりも高いということである。他にも、今すぐ欲しいものがある人もいるだろうし、事業にお金が必要な人、投資してお金を増やす予定の人など人それぞれの事情がある。そのため、時間割引によってどの程度明日の1000円の価値が下がるかも人それぞれということになる。
銀行等にお金を預けた際に金利によって預けたお金がある程度増えるが、これはお金の価値がそれだけ減っているからだともいえる。すなわち金利というものは、現在のお金にどれだけ価値があるのか、時間の経過によってどれだけお金の価値が減ってしまうかを示したものといえる。もちろん、主観的な感覚だけでなく、インフレーション、つまりお金の流通する量が増えることによってもお金の価値が下がり、金利が上昇するということになる。
時間割引やインフレーションが存在するために今日の1000円をそのまま持っていても価値が減ってしまう、明日になれば今日の1000円未満の価値になってしまう。そのため、使わないお金は銀行に預けておくなど、少しでも価値の減少を防ぐのが合理的といえそうだ。
さて、ここまでお金の価値が下がっていくという考え方自体は合理的であるということを確認してきたが、時間割引というものが主観的ものであるがゆえに、そこには非合理的とも見られる側面がある。それが「双曲割引」である。主に行動経済学など論じられるテーマであり、現在の幸福は非常に大きな価値を持ち、時間割引による価値の減少は一定ではないということ表している。
先ほどと似た問いかけをするが、今日もらえる1000円と明日もらえる1010円はどちらが欲しいだろうか?では100日後にもらえる1000円と101日後にもらえる1010円ではどうだろう?経過している時間は同じなのに、答えが変わったという人もいるのではないだろうか。このように、双曲割引は現在に近いほど時間割引の度合いが大きくなるということを示している。
大阪・関西万博に限らず、万博には未来社会を表すイベントという側面がある。これからの世界を見通すため、足を運んだ方も多かったのではないだろうか。私は正直面倒だったので、書店でパンフレット的なものを立ち読みして満足してしまったのである。まあ、「苦労キャンセル界隈」ってことで。
(オウセイ)
参考文献
「日経トレンディ20205年12月号」 日経BP


コメント