BL0164 安全保障のジレンマ(Security Dilemma)

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とある母親がXに投稿した「ママ、戦争止めてくるわ」というハッシュタグがトレンド1位となったのは、今年の総選挙締め切りの前日のことだったらしい。確かにこの言葉には強く関心が寄せられる響きがある。もともとは自身の子供に向けた何気ない発信だったそうなのだが、有名人らがフォローしたらしくて、その「何気ない」が取り除かれてしまい、なんだか政治的思想の色がついてしまい物議を醸しだしたというのが事の顛末だそうである。

少なくとも立候補者も国民も誰もが戦争をしたいなどとは思っていないし、発信したこの人が誰に、どの政党に投票したかもわからない。そうであるにも関わらず、どうやら憲法を改正することや防衛費を増やすことがあたかも戦争をしたがっているかのようなおかしな思い込みをしている人がいたようで、これはつまり憲法改正反対、防衛費増額反対の政党に投票してよ、というキャッチコピーになってしまったようである。

やれやれ。永久中立国のスイスがそうであるように、戦争をしないためには、あるいは他国に侵略されないためには抑止力を高めるより仕方がなく、「話せばわかる」などとするのは昨今の国際情勢を完全に無視していることが自明ではないだろうか。投票結果を見れば、結局のところこのキャッチコピーを無理やりにこじつけたアピールに乗っかるような人は極めて少数派であったことは確かではある。あるいは「最も戦争被害が起きないための具体的な策を講じている政党に投票しよう」というきっかけになったと言えるのかもしれない。もちろん本ブログが特定の政党を応援したり批判したりしたいという意図はないのだが。

一方で「抑止力を高める」という行為は他国との緊張を高めるというのもまた間違った解釈ではないだろう。互いが平和を維持するために抑止力を高め続けた結果として、緊張が高まるというのは「安全保障のジレンマ」として知られていることでもある。かといって、自ら戦争を仕掛けているアメリカの傘の下で、日本が他国から攻められたときにはアメリカが守ってくれるからと呑気な発想ができる時代はとうに過ぎ去ってしまった。スイスが武装中立という政策をとっているように、日本が抑止力を高めなければならないというのは、戦争や侵略をされたくないのだからこれはもうどうにも仕方がない。

「戦争を知らない子供たち」という歌が流行したのは1971年の頃だったという。人類の歴史上では戦争のない時代など皆無なのだが、確かに私も「戦争が遠い昔にありました」などと認識しており、「もう戦争は起こらない、戦争は知らない」と考える子供の一人であった。

さて、今の子供たちはどうなのだろう。日本では確かに戦争は起きていない。そうではあるのだが、私が子供だった頃のように「もう戦争は起こらない、戦争は知らない」と認識している子供は果たして居るのだろうか。それほどまでに戦争がリアリティをもって認識されてしまった今の時代が、ただただ悲しい。

以上

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