EBPM( Evidence-Based Policy Making )

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東京都は少子化対策として国に先立ち2023年度から0歳~18歳の子供に一律5000円を毎月支給するらしい。我が家は東京都にあるのだが、あいにく該当する子供がいないため直接的な恩恵を受けることはないのだが、この政策については応援したい。

何より日本の少子化問題というのは最重要テーマの1つである。統計データをみると、1980年の出生数が年間160万人であったのに対して、2022年では既に80万人を切っている。22年間で80万人減ったのだから、この先の2044年は出生数0人となろうか。

さすがにこれは冗談半分であるが、それでも22年間で半減したのだから、2044年は40万人しか日本で赤ちゃんが産まれてこない、という予測はあながち無謀ではないだろう。恐ろしい事態である。

この東京都の政策について有識者は「むしろ国がやるべき政策だ」という声が多いようだが、その点は少し待ってみるという利点もあるだろう。それがEBPM、日本語でいえば論拠・証拠に基づく政策決定のアプローチとして考える視点だ。

どういうことか。つまり、東京都のこうした打ち手が本当に奏功するのかどうかを見定めたうえで、確かにコストに見合う打ち手のようだとなれば全国展開すればよい。EBPMとしてよく用いられる手法というのが、Aなる政策とBなる政策(または無策)と比して、実際にAなる政策が有効打かどうかを確認検証するアプローチである。

より本格的なEBPMというのは医薬品の承認申請で課せられるところの無作為化臨床試験と同様に、その政策を無作為に割り付けることで、究極的にその政策以外は何も違いがない状態にて社会実験をするというものだ。その意味では東京都、という特殊地域での実施と、5000円の支給以外にセットで実施される(例えば結婚のあっせんなど)政策が混在するので、本格的なEBPMのように5000円支給の効果がクリアにはわからないことになる。

日本の特殊出生率というのが全国平均で1.30程度であり、これは先進国の中でもワーストなのだが、東京都はその中でも1.08と、ワーストofワーストという特殊性がある。それでも東京都のこうした少子化対策のパッケージが奏功するかどうかは、例えば向こう3年ほどの確認をすることで、この1.08という数字がどのように変化するかを見れば、他県への外挿をした場合の予測としてほぼそのまま使えるかもしれないと私は考えている。

他国においてはこうしたEBPMの取り組みは既に進んでおり、例えばアフガニスタンでは「高品質なセンターの教育機関で学ばせることと、低品質とならざるをえない近所に教育機関を複数おいて学ばせること」の比較をEBPMで確認した。

果たしてこのアフガニスタンの例ではどちらの政策が有効であったと思われるだろうか。ここではあえてその答えを記載しないでおこう。同様にして、例えば今回の政策においても、「月額5000円と月額1万円とではどのような結果をもたらすのか」、あるいは「一律ではなく世帯の収入によって支給額を変えたらどうなるのか」といったEBPMのデザインも考えられる。

私たちは「きっとこの打ち手の方が正しいに決まっている」といったように自信過剰になりがちな生き物なようで、然るに本当にそのように確信していても、そのようなセンスが抜群であってもEBPMを実施してみると案外と間違えていることがわかるということもありそうだ。

コロナパンデミックの中にあっても、政府の打ち手を都度都度、ケチをつける人が多いようで、タブロイド紙などは「とにかくどんな政策であっても批判する」約束事があるようだ。そうしないと恐らく販売部数が延びないのだろう。やれやれ。

日本ではまだEBPM、無作為化の社会実験というアプローチがあることを知っている人は限られた人だけのようである。政策A支持者と政策B支持者とが大した論拠もなくお互いをののしり合うようなことをいつまで続けるのか。EBPMはその争いを食い止める救世主となる可能性を秘めている。

以上

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