BL0144 大きな政府(Big government)

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 長らく奴隷の強制労働によって建築されたと考えられてきたエジプトのピラミッドだが、近年では家族単位での定住の形跡や高い建築技術から、専門の労働者や高度な技術者による建設だったと考えられている。また、ナイル川の氾濫にともなう農民の失業者などを雇用する公共事業だったという説もある。いずれにしても、その圧倒的な存在感が当該地域における当時の国家の「大きさ」を物語っていることは言うまでもない。

 公共事業といえば、聖武天皇が東大寺に建てた大仏は正式名称を廬舎那仏(るしゃなぶつ)というのだが、これは当時の国家の総力を挙げて作られたもので、宇宙そのものを表しているとされる。それだけ大きな国家になろう、という意気込みが込められているのだろうか。

 積極的に市場に介入し、格差を縮小させる政府を「大きな政府」という。税や社会保障の負担が大きいかわりに、公共事業や社会福祉が充実しているという特徴がある。大きな政府を有する国としてはスウェーデンやデンマークなどが挙げられ、こうした国は福祉国家と呼ばれる。

 インフラや教育などは、社会全体にとって利益があるため、政府が担い手となることが多い。大きな政府では、そうした公共サービスが充実しているため、国民全体の利益になる産業が大きくなることが期待できる。また、ITや再生可能エネルギーといった特定の産業に補助金を出すことによって国の発展や環境問題の解決につながる産業が育つこともある。

 他方、使われない高速道路など、いわゆる税金のムダ使いが起きやすいのも大きな政府の特徴である。今日では企業・団体献金の是非が大きな話題となっているが、特定の産業に有利な政策をしやすいが故に、献金などによって政府の政策に介入しようとする団体などが現れることもあり、政策の公正さについて疑問が持たれることもある。

 ピラミッドの別名は「金字塔」と呼ばれる。これは後世に残る偉大な作品や業績などを指す言葉でもあるが、そのような大きな成果を残してみたいと思う反面、人に気づかれないような小さなものにも目を向けられるようになりたいとも思うのである。

(オウセイ)

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