統計によると結婚したカップルのうち3分の1ほどが離婚しているらしい。結婚する前から離婚しようと考えている人はおそらく皆無だと思われるので、この数字は正直言って凄いともいえる。ヒトは想像以上に自分の未来の感情など予想することが出来ないということなのだろう。
会社の同僚Y氏は自身がそうだったからなのか、あるいはこの統計の数字を知っていたせいなのか、「結婚する前にまずは一緒に暮らしてみるべきだ」という持論を若かりし頃、よく周囲に力説していたことを思い出す。確かに、離婚するよりは同棲が破綻する方が痛手としては少ない。
医薬品の承認審査で用いられるところのRCT(randomized controlled trial、ランダム化比較試験)という方法論は、当該の医薬品候補が本当に有効なのかどうかを検証するうえで、人類が考え出した最良の打ち手であると今のところは考えられている。これを政策決定に応用したものがEBPM(Evidence-based policy making)であり、ビジネス応用する場合はA/Bテストと名前を変える。
A/Bテスト。わかりやすい名前がついているものだ。Aというマーケティング戦略とBというマーケティング戦略とで、果たしてどちらの方がより売り上げ増、利益増に貢献するのかをテストしたうえで、白黒をつけた後に全国展開する、といったところだ。両者の戦略が拮抗しているならば迷いが断ち切れるうえ、戦略失敗のリスクも軽減できる。会議室でエライさんが大声で「B案でいくぞ」と決める会社よりはかなり優れている。
A/Bテストを利用する企業として必ず名前があがってくるのが作業服販売の大手、ワークマン社である。2019年の店舗数拡大に先立ち、作業服購入層ではない一般客を狙った新業態「ワークマンプラス」をA/Bテストによってショッピングモール内の小型店なのか、それとも街道沿いに設置するのか、なんてことをテストしたという。
ワークマンの売上高推移をみると、2018年から2022年の5年間は毎年上がっていることから、こうしたA/Bテスト戦略は奏功しているのではないだろうか(注意したいのはA/Bテストをしなかったという結果がないので断定できないことだ)。データが気軽に電子ログとして蓄積できるようになった現代において、こうした研究デザインやデータ活用力、分析力の違いは企業価値の違いに直結することだろう。
一方、結婚する前に同棲するというのは、果たして賛成してよいテストなのかどうかちょっと悩ましい。男女平等が叫ばれて久しい現代、「うちの娘が傷物にされた」などという価値観はもう古く、男女が平等なのであれば同棲することで得るもの、失うものに男女差はないハズなのだが、私の中ではやはりここには男女差があるように感じられるのだ。
人生においては「テストしてみる」ことが出来ないこともまだまだ多いように思われる。冒頭のY氏には確か年頃の娘さんが2人いたかと思う。若かりし頃の彼の持論が、人の親となった今、果たして変わっているのかそれともさらに確信を強めているのか、今度、聞いてみようと思っている。
以上
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