ヒロスエさんという女優さんが料理人と不倫したということで事務所に無期限の謹慎を命じられたらしい。契約していたコマーシャルも全て利用が停止されるという。タレントという商売はイメージが売り物なので致し方ないことなのだろう。
一方で相手の人は職業が料理人のようで、自分のお店で引き続き商売を続けるという。この話に「日本社会は男尊女卑だ。ヒロスエも仕事を続けるべきだ。」という謎のコメントをしたタレントがいたそうで、どうやら批判されているらしい。
どうしてこのような発想をしたのかは定かではないのだが、その自身の主張であるところの「男尊女卑」を裏付ける例として、別の女性タレントが妻子あるミュージシャンと不倫した際も男性は仕事を続け、女性の方は仕事を止めなければならなくなったことを補足したとのことだ。
これは認知バイアスの一種であるところの、確証バイアスの説明に使えそうだな、なんて思えたのである。自身の都合に合う事例ばかりをもってきて、あたかも一般論のように間違った認知をしてしまうという現象だ。
実際のところはといえば、この2例はあくまで「好感度」を売り物としていた人がその「好感度が劣化した」ために、タレント価値が少なくとも一時的に下がったということでしかないだろう。実際のところ、男性タレントが浮気をした場合であっても、そのタレントが「好感度」を売りにしていた場合は同じように仕事は“ホサれて”しまう。
逆にいえば好感度を売りにしていないタレントであれば、仕事が減らない、むしろ増えるという可能性もあるだろう。ただ、好感度を売りモノにしていない、ヤサグレた女性タレントはそんなに居ないのでここには性差もありそうだ。
この確証バイアスは日常の中でも頻出する。例えばあなたの友人なるものは大抵、自分と価値観が近いだろうし、その友情を壊さないためにも、あなたが「Aが良い」といえば「いいえ、Bが良い」とは言わない、「そうね、Aが良いね」とすることが圧倒的に多いハズだ。実際のところはBの方がよくても、あなたは周囲にも確認し、「Aが良い」と確信に至る。これが確証バイアスだ。「みんな、そう言ってます」というのが口癖の人も多いが、このセリフを言う人は確証バイアスを知らない人だと思って間違いないだろう。
ネット社会の今は、企業広告のリコメンド機能がこの確証バイアスを助長してしまう。私たちのネットサーフィン情報を元に計算されるおすすめの書籍に、自分の意に反するようなものは決して出てこない。
結果として、例えばパンデミックの対策として緊急事態宣言がなされたときに、あなたがこれに「賛成派」であっても、「反対派」であっても、あたかも多勢があなたと同じ考えであるかのように振舞うことになる。TV番組で「ワクチンを打つならば離婚する」とまで言い放った奥様は、およそこうした確証バイアスの罠にはまってしまったとみていいだろう。
とはいえ、私もそうであるが耳障りのよい意見を多くの人が望むものだ。私たちは幸せでありたいし、そのためにはいつもあなたを否定するような人とは関わらない方がよい。そのうえでこうした罠にはまらない対策は何かと考えてみると、やはり確証バイアスなる概念、広くは認知バイアスなる概念を理解するのが手っ取り早そうである。
以上
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