ピア効果(peer effect)

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病気の原因が遺伝性によるものか、それとも生活習慣等、環境要因によるものかといった議論がしばしば行われる。

遺伝性によるものだ、ということになると運命論が強く、それはどうにも動かしがたいのだが、環境要因による疾患ということになれば回避できるチャンスがあるということになる。とは言うものの、環境なるものもなかなかどうして動かしがたいというのが社会学者の見立てである。

例えば「親ガチャ」などという言葉が少し流行ったが、これは遺伝性というよりも親が貧困であるとか、どこに住んでいてどのような職業にあり、食生活がどのようであるかといった環境異存の色彩の方が強いニュアンスだろう。

「肥満は遺伝する」などというが、これには2種類あって、確かに太りやすい農耕民族特有の遺伝子もあると聞くが、むしろ親や兄弟と食生活が一緒であるため、ヤセの家族は全員が瘦せていて、太っている家族は全員がぽっちゃりとなることが多いということだろう。

環境要因は親や兄弟に限定されるものではなく、友人の多くが喫煙者ならば喫煙者になる可能性が高いとか、一方で幸福な人の近くで暮らすと、幸福になる確率が1.2倍に上昇するなど、環境がもたらす影響力は私たちの想像よりも大きいようだ。

こうした周囲からの影響力のことをピア(同僚・友人)による効果ということで「ピア効果」と呼称する。これをうまく使えば、健康や学力の向上にも貢献できる可能性がある。

例えば、学力テストの結果を校内に貼りだすといった戦略はピア効果を狙ったものだ。自身の順位が下位であれば恥ずかしく、勉強を頑張る動機となる可能性がある。成績が上位であったとしても、10位なら10位の、2位なら2位の「もっと頑張ろう」という効果もあるだろう。

しかしながら、学力テストの結果を貼りだすというのは個人情報の視点からすれば言語道断、「その人が秘匿にしておきたいことをその人の同意なくして公開することはけしからん」ということになるだろう。

その昔は俗に長者番付などと言って、高額納税者をその納税額の順番で公開することが慣例となっていたが、現代の価値観からしたら「信じられない」といったところではないだろうか。それだけ個人情報の保護が意識される時代である。

ところで、では運動会の走り競争などはどうなのだろう。私は運動会で活躍した記憶が全くなく、走り競争といえばどうにかビリにならないように、などと願っていたものである。

運動に自信のない子供であれば大抵、そのようなものだろうとも思う。しかしながら、こうした願いが主催者に届くことはなく、運動会というのは常に公開の場で行われるもので、走り競争をした結果の順位がよりわかりやすいように順位の数字の下に集合を強制される。

これって個人情報的にみてどうなのだろう。そしてピア効果などはありえるのだろうか。「頑張っていないからビリになるのだ」って、なんか違う気がするのだが。

以上

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