逆位相(ぎゃくいそう)、なんて言葉は中学生にも通じるのだろうか。
最近ではヘッドフォンやイヤフォンにもはや“標準”的に搭載されているノイズリダクション機能、つまり雑音を消す機能の説明を生成AIに聞いてみたら、「逆位相」なる単語で説明が始まった。
位相というのはどうやら音の波の形状のことで、雑音を消す機能はその波の形の、ちょうど真逆の音を発信させその音と音とを相殺させることで雑音を“死滅させる”という技術ということのようである。
説明というのは、相手の事前知識や理解できる能力によってその内容の適切さが変わるものであるが、「中学3年生でもわかるように説明して」という指示にてAIが逆位相で説明したのだから、きっと中学3年生のほとんどは「逆位相」について事前知識があるということなのかもしれない。
それはそうとこのノイズリダクション、なんたる発想、技術だろう。ちょっと常人ではおもいつきそうもない発想に思える。また思いついたとしても実際のところはまずその雑音を拾うためのマイクを内包したうえで、適切に逆位相を自動生成し同じタイミングで再生しなければうまくいかないのだから、もはや私にはSFの世界の話である。
この発想や技術が優れモノというのは疑いようもないのだが、実は私たち人間にもこれによく似た“ノイズリダクション機能”が備わっていることが知られている。それがカクテルパーティ効果と呼ばれるものだ。
私自身はカクテルパーティと呼称されるパーティに呼ばれたことが残念ながらないのだが、想像するにざわざわとノイズの宝庫なのは間違いなさそうだ。そんな雑音の中にあっても、誰かが自分の名前を発話していたならば、どういうわけかそのノイズと切り分けて、「自分の話をしているな」と気づくことが出来る。
こうした経験をしたことがあるという人は少なくないだろう。カクテルパーティといわなくても、普通の立食パーティでも恐らく自分の名前はかなり遠くからでも聞き取ることが出来るだろう。
それどころか、電車の中の、ガタン、ゴトンという大きなノイズの中でもとなりの友人とは普通に会話が出来てしまうというのもまた“亜種”のカクテルパーティ効果だ。普通のマイクで音を拾ったのでは、人間同士の会話はかき消されてしまい決して聞き取れるものではないのだが、何故だか人間同士はそんな中で関心のある音声だけを聞き取り、そうでない雑音はリダクションする能力が備わっているというわけだ。
人間の能力、恐るべし、ではないだろうか。
ところで私の聴力の方は最近、全くもって心もとない。相手がマスクなどしていたらもう関心事であろうが自分の名前だろうが正しく聞き取れる自信は全くない。自分の聴力の衰えと、さらに劣化しそうなこの先の将来、私にはこちらの方がより恐るべしである。
以上
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