「家系ラーメン」とは、Web上の定義によれば「1974年以降に登場した神奈川県横浜市発祥の豚骨醤油ベースで太いストレート麺を特徴とするラーメンおよびそのラーメン店群」のことだ。店名に「家(いえ)」が付く。
私が久しぶりに家系ラーメンを訪れた理由は、「学割」があったからだ。只今は大学院生なので、学割が効く。といってもたかだか100円くらいの割引価格でしかないのであるが、なんだか学生証の特典がつくというのは嬉しくて、その店に立ち寄ったのは2回目である。
家系ラーメンはどうにも最初に色々と質問が飛んでくる。九州ラーメンでは必須項目であるところの「麺のかたさ」だけでなく、「味の濃さ」と「油の多さ」。それと無料のライスをつけるかどうか、という質問にも答える必要がある。
私のような年齢になると恐らく正解は「味は薄く」「油は少なく」「ライスは不要」が正解だろう。しかしながら実際の私は決まって「全部、普通で」となる。わざわざ何だかんだと注文を変更するようなことをするのが面倒なのだ。
思えばヘアカットもそうだ。最近は決まって「1cm、短くしてください」と注文する。あとは店員さんからの質問に対して「はい」と答える。「耳は出しますか」「はい」、「もみあげは自然な感じでいいですか」「はい」、「髪を梳きますか(すきますか)」「はい」。とにかく、ああだこうだ、と説明や注文をつけるのが面倒なのだ。
初期値バイアスという言葉は、要するに私のような面倒くさがりの存在によって最初の提示が圧倒的に選択される歪み(ひずみ)のことだ。デフォルト効果とも言う。
医療データ分析という仕事上、これが結構困ることがある。例えばアレルギーの有無という項目にあらかじめ「無」が初期値として入力されていたとしたらどうだろう。実際のところは「不明」であるにも関わらず、「無」のままとなってしまう可能性が増大してしまうというわけだ。
一方でヘルスケア上、「良い初期値バイアス」といわれる国家戦略があって、それがイギリスやフランスでとられている臓器提供の意思表示の仕組みである。初期値が「臓器提供に同意します」であり、同意撤回の手続きをしなければ提供OKであり、結果として日本よりも圧倒的に多い臓器移植の手術がなされ多くの命が救われているという。日本ではこの逆で、「初期値」は「臓器提供No」である。
要するに、このような心理的なバイアスは良いことにも悪いことにも使われうるということである。
ところでその家系ラーメン店、なぜかライスだけは「どうしますか?」と聞くのである。味の濃さや油の量といった「普通」というデフォルトがない。ならばやむをえまい。「お願いします」と言うしかなかろう。
以上
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