地方創生(ちほうそうせい)が叫ばれて久しいのは、人口があまりに都心に集中しすぎたためである。そもそも人口減少がこれから拍車をかけるというのに、地方の街はそれが加速度的に進んでしまい高齢者しかいなくなり、やがて廃墟となる恐れまである。どうにかしなければなるまい。
その意味では自治体も手をこまねいているだけではない。ゆるキャラを作ったり、人が集まる機会を色々と作ったり、ふるさと納税を使ってお金を集めたりといった打ち手は多くの地方でみられる政策だ。
問題はやはり少子高齢化だろう。その昔に一世を風靡した「ニュータウン」のような街づくりをしたところで長期的目線でみれば心許なく、集まった若者がやがて高齢化していけばその先の未来像が描けない。しかるに魅力的な街を作るには、若者にとって魅力的なだけでは持続性がなく、高齢者にとっても魅力的でなければ“現代版ニュータウン”になり得ない。
こうした事情から、このところの街づくりプロジェクトは医療施設や健康増進プログラムに対する投資と創意工夫が欠かせなくなっており、これは公衆衛生の実践そのものである。
実際に私が街づくりプロジェクトに関わったことはないが、街づくりを課題とした授業なら受けたことがある。架空の街ではぼやけてしまうことから、千葉県にある御宿(おんじゅく)をサンプルとして、この街づくりをするにはどうしたらいいかというお題に取り組んだ。
御宿の強みは海に近いことだ。マリンスポーツや海の幸は強みとなる。隣町に亀田総合病院という、よく知られた病院もあり、黒字経営が続く高齢者施設もある。童謡「月の沙漠」ゆかりの地、というのも強みだ。SWOT(スウォット)分析なる手法はこのようにStrengthポイント、強みの分析から入る。
一方でWeakness、つまり弱みもある。都心に通うにはちょっと遠い。ゆるキャラもいるのだが、ちょっと弱い(ようにみえる)。もちろん、あまたの商品やサービスには何らかの弱みはつきものであって、弱みがあるからといって諦めるものでもなく、弱みを見据えつつそれを最小化したり強みによって凌駕したりを考えるという訳だ。
脅威(Threat)は南海トラフ地震等による津波だろう。高齢化社会にあっては認知症患者の割合増も脅威となる。どのような対策が必要かしっかりと考えなければならない。
一方で地方創生という潮流は、街づくりを進めるには良い機会(Opportunity)ともいえる。リモート就業が進んだことも追い風だ。
こんな感じで、実際には自治体からのオファーも頂いていないのに、ありもしない「街づくりプロジェクト」をワイワイガヤガヤと話をするのは楽しくもあった。また、議論の筋道を立てるうえでSWOT分析、つまりStrengths、Weaknesses、Opportunities、Threatsに分けて対策を検討するのは有意義であったと記憶している。
「で、どういった提案になったの?」という質問に対しては、何せ架空のプロジェクトに対するシロウトの提案をここで披露しても笑われそうなので差し控えさせて頂きたい。1つだけ、ゆるキャラを代えてはどうかとして、「月の沙漠」をモチーフにしたキャラを提案したことだけは間違いなく良案だったと思っている。御宿の自治体の人、採用を検討してくれないかな。
以上
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