第二種の過誤(β error 、 type Ⅱ error )

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このところ北朝鮮が頻繁にミサイルの発射実験を行っている。ミサイルの発射情報を国民に知らせるJアラートはしばしば「誤報であった」と報道されており、なかなかうまく運用できていない様子が伺える。

ホリエモンなどは、北朝鮮が日本にミサイルを落としたとしたら日本とはいわないまでもアメリカなどから自国が攻撃を受けることになること必至であるからそのようなことをするハズもなく、大騒ぎすぎだとコメントしている。確かにミサイルを日本に落とそうという意図はないにせよ、果たして北朝鮮の姿勢や技術的精度をそんなに信用しきれるものなのかどうか、私などは「北朝鮮を信用する」というホリエモンの態度そのものに懐疑的である。

本当に困るのは北朝鮮なのだが、それでもJアラートを受信した国民にとっては一大事であり、その心理的影響もはじめ、こうした誤報のミスはなるべく減らして頂きたいというのは国民の誰しもが感じていることだろう。なるべくミスが無いようにして欲しい。

一方で、より多くの人が気付いていると思われるのが、「その反対のミスをするくらいなら今ぐらいの精度でも仕方がないかも」ということだろう。つまり、本来Jアラートが発信されるべき事態に、それが発信されないというミスである。

このエラーは有意差検定における第二種の過誤と同じ性質のものだと言えるだろう。第二種の過誤というのは、実際には差異があるにも関わらずそれを見逃してしまう、俗にいう「ぼんやり者のエラー」のことだ。

仮に比較対照とした標準治療の効き目が50%、今回の医薬品候補物資の効き目が60%であったとしたとき、被験者が少なく両群が50例ずつ、計100例程度だとするとこの差を有意差検定で見つけることはかなり難しく、「有意差ナシ」となる可能性が高い。これがぼんやり者のエラー、第二種の過誤というわけだ。

もしこれが両群100例ずつ、計200例で調べることができれば、期待通り「有意差アリ」と判定される可能性が高い。このように差があるものを差があると判定する能力のことを検出力(power)というのだが、これはいわば第二種の過誤の“反意語”である。

「ぼんやり者のエラー」という日本語を誰が最初に言ったのかわからないが、これは秀逸である。第二種の過誤はβ(ベータ)エラーともいうので、その頭文字とかけていて理解しやすい。

日本は他国と比べるとノーリスク主義とも揶揄される。石橋をたたいて渡るというか、物事の意思決定がどうも遅いようで、それ故に他国の後塵を拝するといったことはビジネスシーンでよくあることだ。

慎重に慎重を重ねて、というのも良いのだが、それによってビジネスチャンスを逃してしまうのはいただけない。Jアラートに「ぼんやり者のエラー」があってはいけないように、もう少し勇気をもって、また批判を恐れずに意思決定できる文化を醸成したいところだ。

以上

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