2026年に開催されたサッカーワールドカップでは、日本は予選ラウンドを突破したものの決勝ラウンド初戦のブラジルに敗退しベスト32という結果であった。
結果だけみれば「予選ラウンドは勝ったものの、決勝ラウンドではすぐに敗退」ということなので何も変化していない、あるいは以前の大会まで決勝ラウンドは16か国だったのでむしろ今大会の方が悪い成績だったとも言える。そうではあるのだが、チュニジア戦で4得点をあげたり、いくつもロングシュートを決めたりと、世界ランキングの上昇が示す通りハッキリと以前よりは強いチームになったなと多くの人が思ったことだろう。
さすがに優勝がどうこうというレベルにはまだ達しておらず、その象徴というのが決勝ラウンドで当たるチームがブラジルまたはモロッコ、あるいはフランスということで「死の組だ」とくじ運を嘆いていることだろう。優勝候補であればくじ運だとか“死の”などということに大騒ぎはするまい。
ただ、多くの選手が「優勝を目指す」と発言するようになったことは良い兆候だろう。これまでの大会にあってはそのような発言をするのはせいぜい本田選手くらいなもので、他の選手もマスコミも本気で受け止めるということはなく、大ぼら吹きと失笑されるのがオチであったように思う。それが今大会では「優勝を目指す」くらいの発言はしてもよさそうな国になったというのであれば大きな進歩といえる。
また、今回は解説者となったその本田選手の言葉を聞いていると、これまでの発言はやはり大ぼら吹きだった可能性もありそうだ。その証拠に予選を勝ち上がった今大会、決勝ラウンドの初戦が間違いなく強豪国となることを「くじ運、どんだけ(悪い)?」と嘆いている。やはりこれまでの「優勝を狙っている」発言は本気というよりはむしろチームを鼓舞することがその狙いだったのではないだろうか。
心理学分野でよく知られるところの「予言の自己成就」は、特に教育分野で有効とされる。「あなたはやさしいから」「あなたは頭がいいから」などとおだて続けると、“豚もおだてりゃ木に登る”ではないが、子供がその期待に応えようとその気になる。「予言の自己成就」では堅苦しいということもあってか、これをピグマリオン効果と表現しても心理学分野では通じる。
キプロスの王であり彫刻家でもあるピグマリオンが自ら作った理想の女性の彫像に強く恋焦がれ、その強い願いが像を本物の女性へと変えたというのはギリシャ神話である。あいにく晴れ予報の天気に対して「雨がきっとふる」と言っても予言は自己成就しないだろうし、彫像に対して何を言っても人間にはなりそうにないのだが、こと人間に対してはそうではない。人には心があり、それ故に「この子はきっと悪い人になる」などと、仮にそのように予想したとしてもそのようになる可能性をアップさせてしまうので発言は厳禁である。
さて、以前は本田選手だけだった「優勝を目指す」発言が、今回大会では多くの日本人選手がそれを口にした。次回大会とは言わないが、いつかその予言の自己成就を見てみたいと密かに願っている。
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