最近では大型ではないスーパーでも独自のパン屋さんが併設していることが多くなった印象である。それだけパンの需要が増えたということなのだろうが、需要に対する供給だけであれば何もわざわざパン屋を併設するスペースなど作らずに市販の菓子パンコーナーで事足りるハズである。
では何故にここまでスーパー内にパン屋が併設されるようになったかといえば、消費者側のニーズに高級志向、本格志向が芽生えたからに違いない。以前、大流行した高級食パンのお店はもはや影を潜めたが、スーパーのパン屋で売られている食パンは一斤500円ほどもする。これに対して市販の菓子パンコーナーで売られている食パンは以前と同じように200円もしない。味に大きな違いがあるとも限らず、およそ私のような平凡な味覚の持ち主では目をつぶって食べたらその違いはまずわかりそうにない。
ちょっと面白いのは市販の菓子パンをおいてあるコーナーと、併設しているパン屋の位置の離れ具合である。大抵の場合、これは大きく離れている。恐らくであるが、消費者に価格を比較されたくはないのだろう、併設パン屋の食パンを手に取った客が、市販の食パンの値段をみてそちらに乗り換えたりされるのが困るからではないだろうか。
ビジネスシーンにあってはよく「カニバる」という言葉が聞かれる。もちろん、私は製薬企業でしか勤務経験がないので他の分野でもそうだと言い切れるものではないのだが、およそ類似の商品・サービスにおいて「カニバる」ことの無いよう、対策をするのは常識である。カニバる、というのはカニバリゼーションのことであり、複数ある類似の自社品やサービスを取り合う、「共食い」現象のことを指す。
例えばある企業が類似の企業を買収したとしよう。当然のことながら100億円+100億円=250億円といったような相乗効果を期待していたところが、カニバリゼーションがおきてしまうと逆に100億円+100億円=150億円といったように売上げの総額が減少してしまうのである。簡単な例でいえばシャンプーAというブランドを所有している会社が、買収した会社のシャンプーBというブランドも所有することになった際に、ブランド名をシャンプーAに統一させ、シャンプーBというブランド名を廃止するといったような戦略においてカニバリゼーションの危険が生じる。シャンプーBというブランドを気に入っていた消費者が必ずしもシャンプーAに乗り換えてくれるわけではない。
ただ、カニバリゼーションを防ぐといった理由はあくまで売り手側の論理であって、消費者である私たちにとって併設してあるパン屋と市販のパンコーナーが離れているのは迷惑でしかない。私はいま滋賀県大津市にあるセカンドハウスにいるのだが、ここ大津では実は併設してあるパン屋と市販のパンコーナーが同じ場所にあるのが普通のことのようであって有難い。どうやらそれは価格設定にあるようで、併設している専門のパン屋が販売する食パンも菓子パンも全て、市販のパンと比べて見劣らないほどの低価格で販売しているのである。それはとてもありがたく、そして何だかカッコいい。
以上


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