ヒューリスティック(heuristic

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「買わずに後悔より、買って後悔。」会社オフィスに近い時計屋さんはよく店頭で売り込みをしているのだが、そのセリフがどうにも気になる。ホントに買って後悔の方がマシなのだろうか。

一般的には「買って後悔」の方が周囲から批判のマトになりがちだろう。失敗がわかりやすいからだ。とは言ってもそれはケースバイケースであって、端的にいえば安価なものは買って後悔というのが少ないだろうが、高級車や不動産のような高価なものは買ってしまっての後悔が大きいかもしれない。

先日、心理学の巨匠、ダニエル・カーネマンが逝去されたというニュースを聞いてショックを受けたのだが、カーネマン先生によると物事を選択するときに人は大別して2種類のシステムのどちらかを“作動”させるらしい。

システム1と名付けた方は要するに「即断即決」だ。お昼のラーメン屋でラーメンを決めるのか、それともチャーハンにするのか。そんなことにヒトはあまり時間を使わないし、使いたくもないだろう。

一方のシステム2と名付けられた思考は「長考」である。様々なファクターを列挙したり、時間をかけて決めたりする。進学先、就職、結婚、離婚、高級車の購入や不動産の購入などはシステム1(即断即決)して良いこと無さそうである。

カーネマンは「ヒューリスティックとバイアス」なる有名な論文を残しているが、ヒューリスティックというのは、簡単にいえばその即断即決の成功確率を向上させる手段といったところだ。

ある程度「失敗して構わない」という状況なのであれば、直観や思い込みを発動させてかまわない。よく知っているメニューの方が、食べたことがない謎のメニューよりも選んで後悔する確率は少ないとか、コマーシャルでよく見る商品の方が、聞いたことのない会社の商品と比べて少し高い価格でも後悔する確率は少ないとか。それがヒューリスティックである。

ではどうしてシステム1とシステム2があるのだろうか。システム1は愚かしく、思い込みによるミスをはらんでいそうだがどうだろうか、というところについてカーネマンは「思考の省略というメリットがある」と説く。私たちは運動をサボるようにして、脳をフルに使ったりすることをサボるというわけだ。

ところで先日、セカンドハウスを購入してしまった。仕事がら関西でのお客様と直接コンタクトをとる必要性があるから、というのは表向きな理由であって、シンプルに関西に住んでみたいという夢があったからだ。

比叡山にほど近く、窓からは琵琶湖が見える。京都駅にも電車で10分。即断即決してしまったのだが、今のところ後悔の念はない。

以上

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